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センター長あいさつ

杉浦 亙
杉浦 亙

国立国際医療研究センター(NCGM)の臨床研究センターでは、臨床研究の推進と支援を使命に、医療の革新に日々取り組んでおります。私たちは8部門23室によって構成され、臨床試験に関連する様々な分野の専門家により、臨床試験の支援、国際連携、産学連携、予防疫学、医学倫理、人材育成、そして医学情報の発信などを通じて、革新的な医薬品や医療機器の開発を加速し、迅速に患者の皆様へ届けることを目指しております。

特にCOVID-19パンデミックを経験し、その中で蓄積された知見と経験は、私たちの研究基盤をさらに強化するための大きな推進力となりました。2020年からの4年間、当センターは治療薬やワクチンの開発に関連する多くの企業治験、医師主導試験、特定臨床研究を支援し、実施してまいりました。この経験を元に、私たちは次なるパンデミックへの備えとして以下の重点的な取り組みを進めております。


国内および国際臨床試験ネットワーク(GLIDE: Global Initiative for Infectious Diseases)の構築

COVID-19のパンデミックでは非常に多くの感染者が報告されていたにもかかわらず、治験などでの症例登録が進まず、開発の遅滞が指摘されています。その要因として感染者が集中した前線の医療機関に臨床試験を遂行するための余力が十分でなかったことが挙げられます。この経験を踏まえて私たちは国際共同治験の経験をもつ藤田医科大学、聖マリアンナ医科大学の先生方と、そして国内の感染症指定病院とともに感染症に関わる国内の医療機関様と連携して、fiesibility調査、契約窓口の一元化、中央一括での倫理審査体制を整備した国内臨床試験ネットワークの構築を進めております(GLIDE:Gloval Initiative for Infectious Diseases)。次の新興再興感染症への備えとして、実効性のある体制の構築を多くの関係者の方々のご指導を仰ぎながら進めております。また、国内における医薬品開発だけではなく、国際的にも医薬品開発を速やかに進めていくことを目的にタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム5カ国との国際共同研究ネットワークARISE(ARO alliance for South East ASIA)を立ち上げて、活動をしております。


Clinical Innovation Network(CIN)の推進

我が国の医薬品開発の重要な課題として、諸外国に比して高いと言われる新薬開発コストが挙げられます。これはdrug lagやdrug lossにつながることから、その解決策が望まれております。私たちはそれを解決に導くことが期待される革新的研究基盤プロジェクトとして国内の様々な疾患レジストリ等を医療研究開発へ利活用を目指すクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)構想に取り組んでいます。このプロジェクトでは医師・研究者が研究活動の中で構築してきた各種臨床試験などで集積してきたレジストリの可視化及びリスト化を実現しております。医薬品開発企業が実際にレジストリを利活用するに当たって、また、研究者がレジストリ構築・運営を行うにあたり将来の利活用を念頭においた設計が行えるように、様々な実務上の支援を提供しております。


研究データ・サンプルバンキング事業REBIND(Repository of Clinical Data and Biospecimens of Infectious Diseases)の展開

私たちは医薬品開発の初期段階に当たる基礎研究の支援体制整備にも取り組んでいます。新たな感染症の発生時には迅速な病原体の特定と初期治療法の開発が喫緊の課題となります。研究者や企業の開発担当者が当該疾患について素早く分析ができるように当該疾患患者から収集した検体や臨床情報を届ける研究基盤として、国立感染症研究所、東北大学メガバンク機構そして東京大学とともに新興・再興感染症の患者からの臨床情報と臨床検体を収集し、それを研究者に提供するというデータ・サンプルバンキング事業、REBIND (Repository of Clinical Data and Biospecimens of Infectious Diseases)を立ち上げています。
現在はSARS-CoV-2とエムポックスそして小児肝炎の検体を収集しておりますが、医師、研究者をはじめとする多くの皆様のご協力のもと、現時点で500症例に上る検体と情報がこのバンクに登録されており、収集の数はさらに増えつつあります。私たちは真に機能的であり、かつ実効性のあるバンキング体制を築き上げるべく、全力を尽くしてまいります。

GLIDE、ARISE、CINそしてREBINDこれらの取り組みは、医薬品開発を加速させ、新たな治療法を患者に迅速に届けることを目的としています。私たちはこれらの革新的プロジェクトを有機的に連携させ、効果的な医薬品開発の推進に努めています。また、引き続き、ご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。


令和6年4月
臨床研究センター長
杉浦 亙