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センター長あいさつ

杉浦 亙
杉浦 亙

国立国際医療研究センター(NCGM)の臨床研究センターは臨床研究の推進・支援を使命とする組織です。7部門23室からなる組織で、臨床試験、企業治験、産学連携、予防疫学そして国際連携などを幅広く様々な研究活動に取り組んでおります。この一年NCGMが実施したCOVID-19に関連する多くの企業治験、医師主導試験、特定臨床研究を支援してまいりました。その実績を踏まえて2021年度に私どもが取り組んでいく3つの重点的な課題についてご紹介します。


REBIND(リバインド)

疾病制御、特に感染症においては、「早期診断、早期治療・対応」は最も基本的な戦略ですが、現在も続くCOVID-19パンデミック禍の過去1年を省察するに、それが必ずしも実現できていなかった現実があります。これはパンデミックの規模が近年稀に見る規模とスピードで拡大したことが最大の要因ですが、一方、これは結果論でしかありませんが、診断技術や治療薬開発への初動が諸外国に比して効率的ではなかったという一面もあるように思います。この振り返りから2021年度からは国の新興再興感染症対策の一環として、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが共同で、新興再興感染症の患者の臨床情報と臨床検体を収集し一括管理するデータ、サンプルバンキング事業を受託し、COVID-19だけではなく次の新興再興感染症への「備え」として国内外の各種開発研究を促進するための体制・組織作りに取り組んでいくこととなりました。この取り組みを医療関係や研究者が一丸となり困難に立ち向かっていきましょうという思いを込めてREBIND(Registry of Clinical Data and Biospecimens of Infectious Diseases ) Projectと名付けました。私ども臨床研究センターは、この我が国の感染症対策の核心的な機能の統括を担うこととなりましたが、真に機能的且つ実効性のある体制を目指して全力で取り組ませていただきます。


国際・国内臨床研究推進基盤の整備

私たち臨床研究センターが取り組むべき課題として、革新的な 医薬品、医療機器等の研究開発の推進があります。前述REBINDとも関連しますが、COVID-19のパンデミックが始まって2度目の春を迎えましたが未だに画期的な治療薬が実用化されていません。「臨床研究実施計画・研究概要公開システム(JCRT)」で治療薬の臨床試験を検索すると二桁の臨床試験が挙がりますが試験の結果について聞くことが少なく、難航していることが推測されます。また国際共同試験に目を向けますと、ClinicalTrials.govには300をこえる多数の国際共同臨床試験が実施されていますが、日本の医療機関が参加している試験はほとんどありません。このような状況を変えるために国内の感染症の臨床試験の交通整理、そして支援をするような機能を持つ共同研究体制の構築を藤田医大と長崎大学と連携して取り組んでいます(Global Initiative for Infectious Disease (GLIDE) project)。現在GLIDEで取り組む医師主導治験をいくつか計画しております。


クリニカル・イノベーション・ネットワーク

私たちがこの3年間取り組んできたプロジェクトに国内の各種疾患レジストリを医療研究開発へ利活用を目指すクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)構想があります。
諸外国に比して高いと言われる我が国の新薬開発コストを抑制する一つの方法として、各種臨床試験などで集積してきた医療情報を、開発の一助として利活用することを目指しております。今までに国内の疾患レジストリに関する大規模な実態調査を実施し、それを元に検索システムを構築してレジストリの可視化及びリスト化を実現しております。2021年度は企業が実際にレジストリを利活用するに当たって、また、研究者がレジストリ構築・運営を行うにあたり将来の利活用を念頭においた設計が行えるように、様々な実務上の支援を提供すること目指しております。

REBIND, GLIDE, CINいずれもpost-COVIDの国内における医薬品開発のあり方を一変させる可能性を秘めた革新的なプロジェクトであり、これらを有機的に連携させることで、早く新薬が患者に届けられるように努力をしていく所存ですので、ご指導、ご支援のほどをお願いいたします。


2021年4月 臨床研究センター長
杉浦 亙