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徒歩や自転車、公共交通機関による通勤が体重増加を抑制する
―日本の労働者約3万名を5年間追跡した結果から―

2019年11月22日

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)は、関東・東海地方に本社がある企業10数社の従業員約10万人を対象にした職域多施設研究(J-ECOHスタディ)を行っています。今般、本研究参加者において通勤手段が把握できた29,758人を5年間追跡し、徒歩や自転車での通勤、あるいは電車・バスといった公共交通機関を利用した通勤が体重増加の抑制に関連していることを明らかにしました。

背景

生活習慣病を引き起こす原因として、身体活動低下と肥満は世界的に問題となっています。その解決策のひとつとして、近年、日々の通勤手段が注目を集めています。マイカー通勤を減らし、アクティブな手段(徒歩や自転車)による通勤あるいは公共交通機関(電車・バス)による通勤を増やすことは、身体活動の不足や肥満の解消のほか、環境問題の解決にもつながることが期待されています。しかしながら、通勤手段と肥満に関する報告の多くは欧米で行われたもので、アジアにおける縦断研究はほとんどありません。そこで、NCGM疫学・予防研究部は、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)の一部集団において、縦断的データを用いて、アクティブな手段による通勤や公共交通機関を利用した通勤と肥満度の変化との関連を分析しました。また、余暇の運動レベルや仕事中の身体活動レベルが違う集団でも同様の結果が得られるかを検証しました。

方法

  1. 対象:J-ECOHスタディ参加施設のうち、通勤手段の情報が得られたサブコホート(1社)で2006年度から2010年度まで職域定期健康診断を受診した30~64歳の 男女29,758名
    *この期間内で健康診断を最初に受けた年度をベースラインとした。
  2. 縦断解析:ベースラインとその5年後の2時点のデータを分析
  3. 通勤手段の変化:主な通勤手段を4つの選択肢(徒歩、自転車、電車・バス、自動車・バイク)で尋ね、ベースラインと5年後の通勤手段の組み合わせから以下の4群に分類
    (1) 両時点とも自動車・バイク通勤(マイカー通勤)の群
    (2) 徒歩、自転車、または電車・バス通勤から自動車・バイク通勤に替わった群
    (3) 自動車・バイク通勤から徒歩、自転車、または電車・バス通勤に替わった群
    (4)両時点とも徒歩、自転車、または電車・バス通勤の群
  4. 肥満度の変化:5年後のBMI(Body mass index)からベースライン時のBMIを引いた変化量
    *BMIは肥満度の指標で、体重[kg]を身長の自乗[m2]で除した値
  5. 統計解析:重回帰分析を用いて、通勤手段の変化とBMIの変化との関連を分析
    ベースラインの性、年齢、BMI、ベースラインとその5年後の喫煙、飲酒、睡眠、運動、仕事中の身体活動、残業時間、交代勤務、職位を多変量モデルで調整し、これらの要因による影響をできるだけ除去

結果

  • 5年間のBMIの変化量をみると、両時点とも徒歩や自転車といったアクティブな手段または公共交通機関を利用した通勤をしている人(0.01 kg/m2)、あるいはこうした通勤方法に替えた人(0.10kg/m2)ではそれほど増加していなかったのに対し、両時点ともマイカーで通勤する人(0.19kg/m2)、あるいはマイカー通勤に替えた人(0.24 kg/m2)では増加の傾向が認められます(図1)。
                         図1:5年間の通勤手段の変化とBMIの変化との関連
    徒歩や自転車、公共交通機関による通勤
  • 余暇に運動をしているとBMIの増加が抑えられる傾向がみられますが、余暇運動の有無にかかわらず、アクティブな手段または公共交通機関による通勤であればBMIの増加は抑えられ、マイカー通勤であればBMIはより増える傾向を認めました(図2)。
                         図2:余暇運動の変化別に見た通勤手段とBMIの変化との関連
    徒歩や自転車、公共交通機関による通勤
  • 仕事で体を使うアクティブな作業から座り作業にかわるとBMIは増え、座り作業からアクティブな作業にかわるとBMIの増加が抑制される傾向がみられますが、仕事中の身体活動にかかわらず、アクティブな手段または公共交通機関による通勤であればBMIの増加は抑えられ、マイカー通勤であればBMIはより増えるという傾向が認められます(図3)。
                         図3:仕事中の身体活動の変化別に見た通勤手段とBMIの変化との関連
    徒歩や自転車、公共交通機関による通勤

解説

本研究より、マイカー通勤を、徒歩や自転車といったアクティブな手段または公共交通機関による通勤に切りかえることで体重の増加が抑えられることを支持するデータが得られました。こうした関連が余暇や仕事中の身体活動によらず認められたことより、日常的に体をあまり動かさない人はもちろん、体をよく動かす人でもアクティブな通勤手段によって体重増加が抑制されることが示唆されます。

国土交通省は「エコ通勤(※クルマ以外の環境負担の少ない通勤)」を推進しています。肥満や成人期の体重増加によりがん、心血管疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることを踏まえると、本結果より、エコ通勤は働く人の疾病予防にも寄与しうることが示唆されます。スポーツ庁が推進する「FUN+WALK PROJECT」では、通勤や職場、余暇をはじめ日常の中に楽しみながら歩くことを取り入れるよう推奨しています。働く人の健康増進や疾病予防のため、社員のそうした取り組みを後押しする役割が企業には期待されます。

掲載誌

Kuwahara K et al. Association of changes in commute mode with body mass index and visceral adiposity: a longitudinal study.
International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 16:101, 2019
URL: https://ijbnpa.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12966-019-0870-x

J-ECOHスタディについて

職域における多施設共同研究で、関東・東海に本社がある12企業(約10万名)が参加した大規模なコホート研究です。事務局をNCGM疫学・予防研究部に置いています。働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防し、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的としています。2012年度に研究を開始し、定期健康診断や循環器疾病・死亡・長期病休に関する登録を行っています。併せて、脳卒中及び心筋梗塞に関する症例対照研究や食生活や運動に関するサブスタディを進めています。2018年度からの第3フェーズでは、働き方や新型タバコに関する調査に取り組んでいます。

発表論文:http://www.schoolhealth.jp/deih/gyosekitop-J-ECOH.html

プレスリリースに関するお問合せ先

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
臨床研究センター 疫学・予防研究部 特任研究員
帝京大学 大学院公衆衛生学研究科 講師
担当: 桑原 恵介(くわはら けいすけ)
電話:03-3964-1211(内線 46213)
E-mail:kkuwahara@med.teikyo-u.ac.jp
〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1

取材に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
広報係長:三山 剛史(みやま つよし)
電話:03-5273-5258(直通) <9:00~17:00>
E-mail:press@hosp.ncgm.go.jp