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喫煙及び禁煙と聴力低下のリスク
職域多施設共同研究(J-ECOHスタディ)

本研究により、以下について明らかとなった。

  • 喫煙は聴力低下のリスクを高める要因である。
  • 聴力低下予防のためにもタバコ対策を推進する必要がある。

この成果は、米国科学誌『Nicotine & Tobacco Research』に掲載されたものである。

発表雑誌

雑誌名:Nicotine & Tobacco Research
論文名:Smoking, Smoking Cessation, and the Risk of Hearing Loss: Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study
掲載日:米国東部標準時間3月14日にオンライン掲載

要約

喫煙により聴力低下のリスクが増加する。

  • 現在喫煙者は非喫煙者に比べ高音域聴力低下のリスクが60%高い。
  • 喫煙本数の増加に伴いリスクが上昇する。

禁煙により聴力低下のリスクが低下する。

  • 聴力低下のリスクは低下し、禁煙5年経過後にはリスクは非喫煙者と同等になる。

背景及び目的

本研究の目的は、大規模な日本人労働者コホートにおいて喫煙・喫煙強度・禁煙と聴力低下との前向きの関連を明らかにすることである。

  1. 喫煙は様々な慢性疾患の危険因子であるが, 喫煙が聴力に影響を及ぼすことを示唆する研究が増えている。
  2. 実験研究によると、喫煙はニコチンの毒性による聴覚器への直接的な影響があるほか、 喫煙に伴うカルボキシヘモグロビン増加や血液粘度上昇による内耳にある蝸牛(音を感じ取る有毛細胞がある)の虚血を引き起こすことが明らかにされている。
  3. 疫学的には、断面研究で喫煙と聴力低下との関連が示されているが、前向き研究の知見は一致していない。

方法

対象

J-ECOHスタディに参加した労働者のうち、ベースライン時点で20歳以上かつ両耳とも聴力低下を認めない50,195名。

追跡

最大8年間

喫煙

  • 喫煙3区分 (50,195名)
    : 非喫煙、過去喫煙、現在喫煙
  • 喫煙量 (39,112名)
    : 非喫煙、1日1-10本, 1日11-20本, 1日21本以上
  • 禁煙後年数 (21,299名)
    : 非喫煙、禁煙後5年未満, 5-9年, 10年以上

アウトカム

純音聴力検査による聴力低下

低音1,000 Hz > 30 dB、高音 4,000 Hz > 40 dB

共変量

性、年齢、BMI、心血管疾患既往、高血圧、糖尿病、脂質異常症
感度分析:さらに職場での騒音曝露、運動、飲酒を調整

喫煙本数と聴力低下:J-ECOHスタディ

喫煙本数と聴力低下:J-ECOHスタディ

禁煙後の年数と聴力低下:J-ECOHスタディ

禁煙後の年数と聴力低下:J-ECOHスタディ

本研究の特長

  1. 大規模なコホート研究(5万人以上)
  2. 長期追跡(最大8年間)
  3. オージオメータによる毎年の聴力評価
  4. 包括的な共変量の調整(感度分析を含む)