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お酒ですぐに顔が赤くなる体質と糖尿病
赤くなる体質によって、お酒による血糖への影響は変わる?
平成24年(2012年)に関東地方の企業に勤める方々約1000名の調査結果にもとづいて、お酒で顔が赤くなる人とならない人の飲酒と糖代謝との関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します。
適度な飲酒は糖尿病リスクを下げる一方で、多量飲酒は糖尿病リスクを上げるとの疫学研究の結果が欧米を中心に数多く報告されています。日本人を含む東アジアの人々の約36%は2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)という酵素の活性が弱い遺伝子型を持つことがわかっています。 この活性が弱い遺伝子型を持つ人は、エタノールの最初の代謝産物であるアセトアルデヒドの分解が遅いため、飲酒後すぐに顔が赤くなります。過去の日本や韓国の研究では、顔が赤くなる人は飲酒によって空腹時血糖値やインスリン抵抗性が高まるとの報告があります。 しかし、これらの研究は適度な飲酒と多量飲酒を区別していませんでした。そこで、古河栄養健康研究では、平成24年に質問紙調査を実施し、飲酒ですぐ赤くなる人とならない人に分けて、飲酒量と糖代謝(空腹時血糖値、ヘモグロビンA1c値1 )、HOMA-IR(インスリン抵抗性2 )の指標)、HOMA-β(インスリン分泌の指標))との関連を調べました。 その結果、お酒で赤くなる人は、赤くならない人に比べて、少量から適量の飲酒で、このHOMA-IR値とヘモグロビンA1c値が低くなる一方で、1.5合を超えると特にヘモグロビンA1c値が高くなることが今回の調査でわかりました。
この研究結果は、1日1合程度の飲酒では、お酒で顔が赤くなる人の糖代謝は悪くならないものの、それ以上の量では糖代謝が悪くなることを示唆し、飲みすぎには注意が必要と考えられます。
糖尿病に予防的なお酒の飲み方
日本酒で1日あたり1合以下が適度な飲酒とされています。
日本酒1合 = ビール500 ml = 焼酎(20度)135 ml
= ワイン240 ml = ウイスキー60 ml
- お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる方や、女性では1日1合より も少ない量が適度な量とされています。
- ふだんお酒を飲まない方は、無理をして、お酒を飲む必要はありません。
1) ヘモグロビンA1c :過去1~3ヶ月間の血糖値の状態を反映
2) インスリン抵抗性:血糖値を下げる働きのあるインスリンの効きにくさ