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職域大規模集団における糖尿病・前糖尿病の有病率
職域多施設研究(J-ECOHスタディ)に参加の12社のうち、2008年(一部は2009年もしくは2010年)に健診を受診した9社に勤める20~69歳の55,452名(男性47,172名、女性8,280名)について、糖尿病・前糖尿病有病率をまとめた結果を発表しましたので紹介します(Diabetes Research and Clinical Practice 106巻1号118-127ページ)。
近年、米国糖尿病学会および国際専門部会により、従来の糖負荷試験や空腹時血糖に加え、血糖値の安定的な指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)を用いた糖尿病の診断が推奨されています。 これまで、HbA1cと空腹時血糖の両方を用いて糖代謝異常の頻度を調べた地域住民での研究はいくつかあるものの、世界的にも労働者を対象とした報告はありません。 また、糖尿病と診断されないが血糖値が正常値よりも高い状態の前糖尿病の人は、将来糖尿病の発症リスクが高く、この集団を対象とした介入が糖尿病発症の遅延に有効であることが報告されています。 そこで、本研究では、日本の大規模勤労者集団において糖尿病および前糖尿病の有病率を調べました。
糖尿病有病率は男性8.0%、女性3.3%
糖尿病(HbA1c 6.5%以上、空腹時血糖126 mg/dl以上、糖尿病薬の服用中のいずれかに該当)の有病率は男性8.0%、女性3.3%でした。そのうち、約8割の人がHbA1c基準に該当していました。また、前糖尿病(HbA1c 6.0-6.4%もしくは空腹時血糖110-125 mg/dl)の有病率は男性14.1%、女性9.2%でした。糖尿病・前糖尿病いずれもが加齢に伴って増加し、特に40代半ばから50代における増加が顕著でした(図)。
国民健康・栄養調査に準じて糖尿病をHbA1c 6.5%以上もしくは糖尿病治療中として定義し、年齢別に比較したところ、40歳代と50歳代の糖尿病有病率は男女ともに国民健康・栄養調査結果(2007年)とほぼ同じでした。
今回の研究では、糖尿病の人は、全体(20歳代~60歳代)の男性の13人にひとり、女性の30人にひとりでしたが、40歳代以上に限定すると男性の7人にひとり、女性の21人にひとりの割合であることがわかりました。 また、前糖尿病についても、全体の男性の7人にひとり、女性の11人にひとりの割合でしたが、40歳代以上では男性の6人にひとり、女性の8人にひとりであることがわかりました。以上のことから、糖尿病予防には40歳以上をターゲットにしたスクリーニングや介入が重要であると考えられます。
発表論文
Uehara A, Kurotani K, Kochi T, Kuwahara K, Eguchi M, Imai T, Nishihara A, Tomita K, Yamamoto M, Kuroda R, Nagata T, Omoto D, Murakami T, Shimizu C, Shimizu M, Miyamoto T, Nagahama S, Nakagawa T, Honda T, Yamamoto S, Okazaki H, Sasaki N, Nanri A, Pham NM, Kabe I, Mizoue T, Kunugita N, Dohi S; Japan Epidemiology Collaboration of Occupational Health Study Group. Prevalence of diabetes and pre-diabetes among workers: Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study.Diabetes Res Clin Pract. 2014;106(1):118-27.