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縮小ランク回帰による食事パターンと抑うつ症状の関連―断面調査の結果から―
「野菜や果物、日本の典型的な食品(きのこ、海藻、大豆製品、緑茶)に特徴づけられる食事パターンのスコアの高い人ほど抑うつ症状が少ない」という栄養疫学調査の結果を学術雑誌Psychiatry Researchに発表しました。
葉酸やミネラル摂取が抑うつ症状の低下と関連していることがいくつかの研究で報告されていますが、従来の食事パターン分析は抑うつ症状に関連した栄養素に基づいて抽出されていませんでした。本研究では、縮小ランク回帰により抑うつ症状に関連する栄養素に基づいた食事パターンを同定し、抑うつ症状との横断的な関連を日本の職域集団において検討しました。
古河栄養健康研究では、関東地方のある企業の従業員約2800名において平成24年度および平成25年度の定期健康診断時に栄養と健康に関する質問紙調査を実施しました。同意の得られた18歳から70歳の参加者のうち、重篤な疾患の人を除く2006名を解析対象としました。抑うつ症状の評価には、世界的に広く使用されている標準的な質問票(CES-D)を用いました。食事パターン解析には、対象疾患に関連する栄養素(応答変数)の変動をできるだけ多く説明する食品(予測変数)の線形関数、つまり食事パターンを明らかにする縮小ランク回帰を用いました。応答変数として、先行研究で抑うつ症状低下との関連が報告され、かつ本研究の対象者においても関連があった6栄養素(葉酸、ビタミンC、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄)を選定しました。 予測変数は、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)で評価した52食品です。応答変数の変動を最も多く説明する食事パターンのスコアにより対象者を3群に分け、抑うつ症状との関連を調べました。この際、性別、年齢、事業場、婚姻状況、職位、勤務形態、残業、余暇の身体活動、仕事関連の身体活動、喫煙、総エネルギー摂取量を統計的に調整しました。
図に示すように、野菜、果物、きのこ、海藻、大豆製品、緑茶の頻回摂取で特徴づけられる食事パターンが抽出され、このスコアが最も高い(その食事パターンの傾向が強い)群では最も低い群に比べ抑うつ症状のオッズ比が38%低下していました。この食事パターンは、応答変数として選定した各栄養素との相関が高く、これらの栄養素の複合効果により抑うつ症状が低下した可能性があります。 これらの栄養素が脳機能の維持に働くメカニズムとして、神経伝達物質の合成や神経毒性作用のあるホモシステインの低下、活性酸素の抑制などが考えられています。
職域集団における研究から、野菜や果物、さらに日本人が伝統的に摂取してきた食品が豊富な食事が、良好なメンタルヘルスに関連していることを示唆する結果が得られました。この結果は、前向き研究によって検証する必要があります。
【発表論文】
Miki T, Kochi T, Kuwahara K, Eguchi M, Kurotani K, Tsuruoka H, Ito R, Kabe I, Kawakami N, Mizoue T, Nanri A. Dietary patterns derived by reduced rank regression (RRR) and depressive symptoms in Japanese employees: the Furukawa Nutrition and Health Study. Psychiatry Research 【in press】