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抑うつ症状とミネラル摂取との関係―断面調査の結果から―

「マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルを多く摂取している人は摂取が少ない人に比べて抑うつ症状が少ない」という栄養疫学調査の結果を学術雑誌Nutritionに発表しました。

欧米などの研究からミネラル摂取と抑うつ症状との関連が報告されていますが、欧米に比べてカルシウムなどのミネラル摂取が比較的に少ない日本人における研究はほとんどありません。 本研究では、ミネラル摂取と抑うつ症状との横断的な関連を日本の職域集団において検討しました。

古河栄養健康研究では、関東地方のある企業の従業員約2800名において平成24年度および平成25年度の定期健康診断時に栄養と健康に関する質問紙調査を実施しました。 同意の得られた18歳から70歳の参加者のうち、がん、循環器疾患、肝疾患、腎疾患、精神疾患の人を除く、2006名を解析対象としました。抑うつ症状の評価には、世界的に広く使用されている標準的な質問票(CES-D)を用いました。 また、簡易型自記式食歴法質問票(BDHQ)により、過去一か月間に食べたものを詳しく尋ね、習慣的な食品摂取量を算出しました。各ミネラル摂取量(マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛)の三等分位により対象者を三群に分けて、ぞれぞれの摂取量と抑うつ症状との関連を調べました。 分析にあたって、ミネラル摂取以外の抑うつ症状に関連する要因(性別、年齢、事業場、婚姻状況、職位、余暇の身体活動、仕事関連の身体活動、喫煙、飲酒、総エネルギー摂取量、残業、勤務形態、葉酸摂取量、ビタミンC摂取量、ビタミンB6摂取量、 ビタミンB12摂取量、n-3系不飽和脂肪酸摂取量)の影響をできるだけ取り除きました。

その結果、図1に示すように、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルを多く摂取している人は摂取が少ない人に比べて抑うつ症状が少ないことが分かりました。 マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛の各摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べて抑うつ症状のオッズ比がそれぞれ37%、36%、41%、37%低いという結果でした。 これらのミネラルは、セロトニンなど脳神経伝達物質の合成に関わっていることが知られており、今回の結果は生物学的メカニズムの点からも妥当といえます。ただし、一時点での本調査にもとづく結果であり、因果関係がはっきりしません。 今後、縦断研究によりミネラル摂取と抑うつ症状との関連を検証する必要があります。

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発表論文

Miki T, Kochi T, Eguchi M, Kuwahara K, Tsuruoka H, Kurotani K, Ito R, Akter S, Kashino I, Pham NM, Kabe I, Kawakami N, Mizoue T, Nanri A. Dietary intake of minerals in relation to depressive symptoms in Japanese employees: the Furukawa Nutrition and Health Study. Nutrition【in press】