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研究紹介

主な研究プロジェクト

NCGM職員におけるBNT162b2ワクチン2回接種後の液性・細胞性免疫応答の経時変化:9か月間の縦断調査

研究概要

ファイザー社BNT162b2を2回接種したNCGM職員100名を対象に、液性免疫(SARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的IgG抗体[IgG-S] [図A]、中和抗体 [図B])と細胞性免疫(T細胞) [図C, D]について経時的に評価した。IgG-SおよびT細胞免疫応答は、1回目接種後から上昇し始めた。その力価は2回目接種後7日目で最大となった後、2回目接種後8か月 まで徐々に低下した。一方、十分な中和活性は2回目接種後7日目から獲得されていた。T細胞免疫は中和活性よりも誘導が早かったことから、十分なレベルの中和抗体を獲得する前に、T細胞の免疫応答が獲得されていることが示唆された。液性・細胞性免疫応答は、2回目接種後、6~10週間は持続するが、7か月以降は維持されなかったことから、本研究はブースター投与(3回目接種)の必要性を明確にしている。

連携先(内部連携先、企業・団体名の記載)

センター内
疫学・予防研究部, 中央検査部, 難治性ウイルス感染症研究部, 国際感染症センター,エイズ治療・研究開発センター
外部機関
アボットジャパン合同会社, 鹿児島大学

実績

出版論文

Takeuchi JS, Fukunaga A, Yamamoto S, Tanaka A, Matsuda K, Kimura M, Kamikawa A, Kito Y, Maeda K, Ueda G, Mizoue T, Ujiie M, Mitsuya H, Ohmagari N, Sugiura W.
SARS-CoV-2 specific T cell and humoral immune responses upon vaccination with BNT162b2: a 9 months longitudinal study.
Sci Rep. 2022; 12(1):15447. https://doi.org/10.1038/s41598-022-19581-y

症例報告: Good症候群の患者におけるCOVID-19の再発とウイルス進化

研究概要

 Good症候群による免疫不全により、COVID-19を再発した一症例についての報告である。技術支援室では抗ウイルス抗体(IgG-S, IgG-N)の測定、リアルタイムPCRによるウイルス量の定量、そして、SARS-CoV-2の全ゲノム解析・系統解析を担当した。

 本患者は2021年8月、COVID-19で入院した。レムデシビルを3回投与しSARS-CoV-2の陰性が確認されたが、発症から272日目にCOVID-19再発により再入院した。レムデシビルとカシリビマブ/イムデビマブを投与し著効した。
 患者の2回目入院時(発症後37-90日)、国内ではデルタ株が普及していたが、3回目の入院時には(発症後272-287日)、オミクロン株(BA.2)が主流だった。それにも拘わらず、ウイルスゲノム解析の結果、患者由来の4ウイルス(発症後44日, 54日, 84日, 272日に採取)は全てデルタ株(AY.29)に分類された。つまり、患者は異なる株のSARS-CoV-2に再感染したのではなく、長期間持続感染していたことが示唆された。GISAIDより抽出した国内配列とともに、患者由来SARS-CoV-2配列の系統解析を実施したところ、患者由来配列は、系統樹内で1つのクラスターを形成し、発症後272日目の配列の配列は、デルタ株にも拘わらず、オミクロン株並みの変異を蓄積していた。つまり、長期間のSARS-CoV-2持続感染により、多重変異を有するウイルスへと進化したことが明らかとなった。
 免疫不全の患者では、SARS-CoV-2の持続感染がしばしば報告されており、ウイルスゲノムの経時的変化を調査することで、新規変異の出現を監視し、それに応じた治療法を選択していくことが重要であると考えられる。

連携先(内部連携先、企業・団体名の記載)

センター内
呼吸器内科

実績

出版論文

Iwasaki M, Hashimoto M, Takeuchi JS, Kusaba Y, Kimura M, Terada-Hirashima J, Sugiura W, Hojo M.

Relapse of COVID-19 and Viral Evolution in a Patient With Good Syndrome: A Case Report.
Cureus. 2024; 16(1): e52592. https://doi.org/10.7759/cureus.52592