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ARISE 活動実績

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NCGMとインドネシアのSiloam Hospitals Groupが、臨床研究協力に関する覚書(MoU)を締結しました ~群島国家インドネシアにおける臨床研究の拡大と強化に向け~

 

要旨

2022年8月13日、国立国際医療研究センター(理事長:國土典宏、略称:NCGM)は、インドネシア最大規模(全土で42病院と31の診療所を運営)、かつ優れた医療を提供するシロアム病院グループ(SHG)と協力に関する覚書 (MOU)を締結しました。MOUの署名にはNCGM臨床研究センター(CCS)の杉浦亙センター長とSHGのグレース・フレリータ所長が立ち会いました。また、SHGに新設された臨床研究部を立ち上げるため、NCGM-シロアム共催セミナー「臨床研究に対する意識改革とコミットメント強化、将来の医療変革に向けて」が開催されました。この様子は、インドネシアの全国ネットのテレビ局3社で報道されました(杉浦センター長のインタビューは1分6秒からです)。



  • MRCCC Siloam Hospitals Semanggi

  • Siloam Hospitals TB Simatupang

  • Siloam Hospitals Lippo Village

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MOU式典記念撮影 左から順に、シブライアン研究員(DIT)、宮脇主幹(AMED)、園田研究員(DIT)、ニラサリ博士(SHG)、スリアプラナタ医師(MRIN)
フレリータ医師(SHG)、ユスフ教授(MRIN)、杉浦センター長(CCS)、飯山部長(DIT)、ルーシー医師(SHG)、ジョー医師(MRIN)、ギンティング医師(MRIN)


NCGMとシロアム病院グループ(SHG)の共同事業概要

インドネシアは約17,000の島々からなる群島国家であり、面積は190万平方キロメートル(日本のほぼ5倍の面積) を占め、人口は2億7500万人です。人口の1億3400万人 (~50%)が僻地や農村に住んでいます。SHGは1996年に設立された私立病院グループで(1)、全国29州に42の病院と31の診療所があり、このうち6つの診療所はインドネシアで最も僻地にあるパプア地方にあります。SHGはまた、JCI (Joint Commission International 国際的医療機能評価) によって認定された、インドネシアで最初の病院でもあります。SHGには7,732名の看護師とコメディカル、3,430名 の総合診療医・専門医・歯科医がおり、3,792床の入院ベッドを有します。NCGMのインターナショナルトライアル部(DIT)は、2021年からモフタルリアディインスティテュート(MRIN)研究所と共に、COVID-19の体外診断用医薬品の国際共同臨床研究をSHGと共に実施してきました。
SHGは、インドネシアの人々に対するサービスの質をさらに向上させるために、臨床研究部を設立しました。本部門は、2020年1月に日本で開催されたDIT主催の、「多地域臨床試験短期研修プログラム」に参加したニラサリ博士により牽引されています。COVID-19のパンデミックにより、エビデンスに基づく質の高い医療サービスの早期提供に向け、臨床研究の重要性がより認識されるようになりました。そのようなタイミングで、SHGはNCGMに臨床研究部門の設立を打診しました。NCGMは、SHGの質の高い医療サービスと、都心部から僻地までの多くの人々に医療を提供するその理念に賛同し、SHGへの支援を開始しました。本事業の目的は、臨床研究部の組織と管理体制の強化、臨床研究専門家の育成支援、行政・企業・アカデミアとの研究ネットワークの構築を支援することであり、研修やコンサルテーションを通じて支援していきます。第一段階としてNCGMは、現地でのセミナーやワークショップの開催、また選ばれたスタッフを日本に招待し、SHGの臨床研究実施能力向上を支援しています。

MOU調印式および臨床研究部発足イベント

2022年8月13日にMOU調印式が行われ、NCGMを代表して杉浦臨床研究センター長が冒頭挨拶を行いました。SHGは、インドネシア大学医学部、スリアンティサロッソ国立感染症病院、モフタルリアディインスティトュート(MRIN)研究所に続き、NCGMとMOUを締結したインドネシアで第4番目の機関となりました。これらの機関は、NCGMが主導して発足した、アジアの臨床研究ネットワークであるARISE(ARO Alliance for ASEAN and East Asia)のメンバーでもあります。
MOU式典に続き、「臨床研究に対する意識改革とコミットメント強化、将来の医療変革に向けて」と題されたNCGM―シロアム共催セミナーが行われました。SHGの全グループ病院に対して正式に臨床研究部が紹介され、機能や将来構想などが説明されました。セミナーは、インドネシアFDA、保健省、インドネシア大学等の国内外の有識者を含む11名の講演者による三回のセッションで構成され、各組織の研究活動や研究に関する指針等について発表しました。NCGMからは、杉浦センター長がNCGMの臨床研究センターを紹介し、DITの飯山部長が「臨床研究における国際連携の重要性」について説明しました。また、インドネシアMOH保健開発政策局の副局長がオンライン参加し、挨拶およびプレゼンテーションを行いました。当日の会場参加者数は約100人、オンライン参加者は約500人でした。参加者のほとんどはSHGからですが、他の臨床研究機関、CRO、製薬会社の参加もあり、全体的に活発でインタラクティブな質問と議論がありました。さらに、インドネシアの全国ネットのテレビ局3社で、杉浦センター長へのインタビューも含めて本イベントが報道されました。

今後の展望

この導入イベントのフォローアップとして、臨床研究に関心と強い意欲を持つ医療スタッフや研究者を対象としたGCP(Good Clinical Practice)ワークショップ開催を2022年10月にSHGで予定しています。このワークショップは、将来的に臨床研究を支援・実施できる臨床試験人材プールの構築も目的としています。また、SHGがARISEネットワークに参加することで、アジア地域における国際的な試験ネットワークの強化が期待されます。
人口の多い群島国家であるインドネシアは、すべての市民に質の高い公平な医療提供を阻害する地理的な障壁があります。臨床研究における連携は、医療従事者の専門性と研究インフラを向上させ、新規製品の開発と規制当局の承認プロセスを加速させることで、スポンサーだけでなく、研究実施施設や地域社会にも利益をもたらし、最終的に人々へのより良い医療サービス提供を目指します。

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杉浦センター長によるNCGMおよびCCSの活動の説明

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飯山部長によるパネルディスカッションでのARISEの発表
左から順に、SHG臨床研究部長のニサラリ医師、飯山部長、MRIN学長のユスフ教授、インドネシア大学のセティアブディ教授

(1)シロアム病院グループ(SHG)について

(1)シロアム病院グループ(SHG)について
医師と看護師は、二次・三次医療サービスを提供するだけでなく、国の医療プログラムの焦点であるHIV/AIDS、結核、子どもの栄養失調、予防接種プログラムを中心に、地域社会に一次医療サービスや啓発教育も提供しています。また、他に特筆すべき点として、医療分野における人材育成を支援していることです。SHGと同じグループに属しているペリタ・ハラパン大学 (UPH) は看護学部と医学部を有し、特に看護学部生には授業料は全額免除であり、スラウェシ島やヌサ・トゥンガラ州、パプア などインドネシア東部の比較的開発が遅れている州を含む、全国の州から有望な学生を受け入れ、卒業後はSHGグループ病院に配属されます(2020年シンドニュース)[1]。質が担保された人材の持続可能な育成システムにより、地域だけでなく病院にも利益をもたらすことができます。これにより、質の高い医療サービスを全国的に維持・向上させることが可能となります。
SHGは私立の病院グループですが、私費診療に加え、政府による国民皆保険による医療提供も行っています。(現在までに、国家社会保障制度であるBadan Penyelenggara Jaminan Sosial Kesehatan(BPJS)への参加率は、インドネシア人口の82%に達しています。)

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[1]  Sindonews(2020).UPH Sediakan Beasiswa Penuh untuk Guru dan Perawat Professional (UPHは専門教師と看護師になるための全額奨学金を提供している) https://edukasi.sindonews.com/read/155358/213/uph-sediakan-beasiswa-penuh-untuk-guru-dan-perawat-profesional-1599304164?showpage=all

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上部:シロアム病院グループの病院および診療所の所在地および診療所
下部:地方におけるSHGの医師・看護師の活動